30.11.2020

木材の特性を変える

木材を保護する目的は、木材や木工製品の優れた特性を維持するためでもあり、腐敗、カビ、害虫から守るためでもあります。通常、木材は適切な構造的保護を施していれば、手入れをしなくても長持ちします。木材の長期間の耐久性の第一条件は、含水量を常に20%以下に保つことです。木材が構造的な方法で保護することができない状況にある場合は、化学的な方法で保護することもできます。木材用の保護剤をスプレー、コーティングしたり、浸み込ませたりする方法や、加圧含浸や真空含浸などの方法もあります。化学的な保護法が使われるようになる前は、食塩水で木材を湿らせたり、表面を焦がしたりする方法が木材を保護する方法として使われてきました。

スプレーやブラシで木材用の保護剤を塗布する場合、何度も繰り返し塗布しない限り保護剤は表面から1~2mmの深さまでしか浸み込まないため、保護効果は十分とは言えません。保護剤に浸すと、木材の表面から約5mmの深さまで保護剤が浸み込みます。新しい木材用保護剤が次々と開発されており、多くの商品から選ぶことができます。ほとんどの木材用保護剤にはペンタクロロフェノール、ラッカー、防水剤が含まれています。木材の含浸は生物学的損傷や害虫からの保護を目的としています。木材の含浸クラスは木材が受けるストレスにより決められます。真空含浸では、木材の表面の深さ5~10mmまで含浸溶剤が浸み込みます。加圧含浸では、マツの場合は心材を除いて全体に浸み込みます。スプルースの場合、木材表面の吸引性(細胞壁が閉じること)により、10mm以上は浸み込みません。木材1㎥あたり、数十キロの溶剤が吸収され、含浸クラスにより吸収量は異なります。

木造建築の構成材用の表面処理溶剤やコーティング剤に関して、中には矛盾する情報もあります。工場で生産された塗料と天然のいわゆる伝統的な塗料では、使用した結果が大きく違うことが一般的です。例えば、外壁に厚いフィルムを形成する塗料を使用したことで多くの問題が発生し、外壁用の丈夫な建材としての木材の評判に傷が付きました。ところがその一方で、損傷の原因は塗料だけとは限りません。設計ミスや粗悪な木材を使って建てられたことが原因の場合もあります。木材の外壁の表面処理の観点から言えば、構造物が正確に作られていることが重要です。

伝統的に木材の表面加工は天候に対する木材の耐久性を向上よりも、好みの色に変えることを目的に行われてきました。表面処理加工用剤やコーティング剤を選ぶ際は、表面の手入れのしやすさや、処理を施すのに最適な時期を考慮することが大切です。外壁の表面の粗さは塗料を塗った表面の耐久性にも影響を与えます。木材の表面の挽きが細かいほど、塗料の耐久性もアップします。プレーナー加工を施した表面を厳しい気象条件にさらすと塗料が剥がれ落ちやすくなります。その一方、表面が粗すぎたり均一でないと、処理が難しかったり、簡単に汚れを落とせなかったりします。例えば、オーガニックタールや赤色土の塗料は天候の影響を受けて磨耗します。リンシードオイルも同様に表面に粉を吹いたり磨耗したりします。そのため塗料を塗りなおしても木材表面の塗装が厚くならず、メンテナンスや塗りなおしの際に、古い塗料をはがす手間が省けます。塗料のメンテナンスに関する一般的な問題点は、メンテナンスを行わない、または頻度が少ない、間違った塗料の選び方、濡れた表面や汚れた表面に塗料を塗ってしまうことです。

木材の特性はさまざまな処理を施すことで変えたり、改善したりすることが可能です。用途ごとに定められた条件に従って製造された木材を専用木材と言います。多孔性の木材は、圧力、熱、木材に含浸させる化学薬品を使って加工します。広葉樹の木材の加工や化学処理は針葉樹の木材に比べると比較的簡単です。これは木の細胞構造が異なるためです。無水マレイン酸などの化学薬品を使うと、木材の含水量の変化を抑えて、防腐性や防火性を高めることができます。ただし、加工用の薬品は比較的高価で、一部の薬品や加工時の副産物として生成される化学物質は環境に有害であることが立証されています。そのため、環境的な価値が重要性を増している昨今は、化学薬品による木材の保護を控えるようになってきています。木材の密度、強度、表面の硬さは圧縮加工により向上します。広葉樹は圧縮により最大50%まで体積が減ります。針葉樹の場合は、およそ40%ほど体積が減ります。ただし、圧縮加工を施した木材に化学薬品による安定化加工を施さなければ、湿度の影響を受けて元の体積に戻ってしまいます。

木材を熱処理することで、含水量の変化を抑え、生物学的な耐久性を高めることもできます。熱処理を施した木材は色が濃くなります。さらに、木材からさまざまなエキスが取り除かれ、重量が軽くなり、平衡含水量が減り、断熱性も1.3倍ほどにアップします。ただしその一方で剛性が低下し、強度特性もやや低下します。熱処理を正しく行わないと、ひびが入るリスクが高まります。熱処理後に木材を機械加工する際、内部のひびは最も大きな問題の一つと見なされてきました。熱処理を施した木材の表面は非常にコンパクトなので、接着が難しくなり、木に吸収される普通のPVA接着剤を使用した場合に、通常よりも乾燥に長い時間がかかります。その一方、熱処理を施した木材には塗料がよく馴染みます。熱処理を施した木材の場合、木目の方向に水分を吸収しないように、端の断面を塗料や薄板で保護することが重要です。